ダメ人間にもなれない

PCの画面をクリックするしかできない男の日記

ロッキー4を観た ネタバレ注意

 

あらすじ

 

クラバーを倒し、再びチャンピオンに返り咲いて幸せな日々を過ごすロッキー。そこにソ連(現ロシア)のアマチュアボクシングチャンピオンのドラゴがプロボクシング界に参入し、ロッキーへの挑戦を申し出る。
それを聞いたロッキーの宿敵でもあり、最大の親友でもあるアポロは「引退してもまだ闘志は消えていない」と言い、ロッキーの代わりにドラゴと戦うことに。

 

ロッキーをセコンドに迎えてドラゴと対戦したアポロは、当初は往年のテクニックでドラゴを翻弄するなど余裕があった。だがドラゴは反撃に転ずると強烈なパンチを浴びせ続け、アポロは何度もダウンを奪われてしまう。あまりに凄惨な状況から、ロッキーは試合を止めるように促すも、最後まで戦い抜こうとするアポロはそれを拒み、ドラゴに立ち向かい続ける。そして遂にリングに沈んだアポロはそのまま立ち上がることもなく息を引き取る。

 

最大の親友を喪ったロッキーはアポロの敵を討つべく、ドラゴとの対戦を決める。決戦の地はアウェーのソ連。ファイトマネーはなし。ソ連の最新鋭の科学トレーニングで鍛え上げるドラゴに対して、ロッキーは極寒の大自然の中で黙々とトレーニングを重ねる。

そして運命の決戦の日。観客のほぼ全員がロシア人かつ、ソ連の大物政治家まで顔を見せる完全アウェーの中、冷徹な殺人マシンと化したドラゴとの戦いのゴングが鳴る…

 

 

アポロの死

 

前作ではミッキーを亡くしたが、今回はミッキーの後を引き継いだアポロをも喪う。思えばアポロは、登場した当初は口達者で挑発ばかりする生意気なイメージが強かったけれども、ロッキーとの2回(厳密には3回)の激闘を経て友情が芽生えていった。ミッキーを亡くしたロッキーを厳しくも粘り強く支え、ロッキーのチャンピオン返り咲きに多大な貢献を果たした。
今回はその恩を返すでもないけれども、ロッキーが逆の立場になって支えようとする。もっともこれはロッキーにとって最大の後悔になってしまうけれども。

 

 

アメリカ対ソ連

 

放映された時期が冷戦の真っただ中の為、アメリカとソ連の対立が際立っている。前作まではナショナリズムとかは描かれなかったけれども、今作では国家ぐるみで動いている。特にドラゴ陣営が顕著だ。国家の最新鋭のトレーニング施設で徹底的に管理されたメニューをこなしていく。いかにも共産圏らしい。それに対してロッキーは現地の雪に囲まれた丸太小屋で、丸太を切ったり、ソリを引いたりといった原始的トレーニングを積む(しかもソ連の当局の監視付き…こちらも共産圏らしい)。そんなピリピリムード全開の中、ロッキーがトレーニング中に雪で動けなくなった現地住民を助けるシーンが個人的にはホッコリする。あとは監視役の当局の車が雪に埋まるのもちょっと笑える。

 

ドラゴの感情爆発

 

アポロを死に追いやった憎き敵ドラゴ。試合中も不気味なくらい冷静で、黙々と強烈なパンチを浴びせる「殺人マシン」といってもいい。そんなドラゴだが、ロッキーとの激闘の中で、何度打ちのめしても立ち上がり続け、試合開始前は大ブーイングを浴びせていた観衆をも次第に味方につけていく状況に業を煮やしたソ連の首脳から、「国家のメンツを潰す気か?」と発破をかけられる。それに対してドラゴは「俺は自分自身の為に戦っている!」と言い放つ。殺人マシンから一人のファイターに変わる瞬間だ。

 

感想

 

完全に政治的メッセージの強い映画だと思った。今まではどん底からの挑戦、失われたハングリー精神とプライドを取り戻す戦いといったドラマだったけれども、今回のロッキーはアメリカ代表として国家の威信を背負っている。まあ完全に国民的ヒーローとなったからだけども。
大ブーイングを受けた観衆を徐々に味方に引き付けていき、ドラゴに打ち勝つ。最終的には観衆だけでもなく、相手国の大物政治家からも称賛されたロッキー。その際に放った、「俺たちは変われる」。これは冷戦もいつかは終わり、また平和な時代が訪れることへの思いを込めた言葉だと思うけれども、どの時代でも通じるものではなかろうか。