ダメ人間にもなれない

PCの画面をクリックするしかできない男の日記

クリード チャンプを継ぐ男を観た ネタバレ注意

前作のロッキー・ザ・ファイナルでロッキーシリーズが完結したかと思いきや、何と続編があったんですね~(今年に入って知った)。それが「クリード・チャンプを継ぐ男」。

 

主人公はあのロッキーの宿敵でもあり最大の親友でもあったアポロ・クリードの非嫡子、アドニス・ドニー・ジョンソン(以下アドニス)。非嫡子というのは隠し子。ロッキー4のドラゴと戦って亡くなる直前にできた子供なのだ。アポロさん、あんなにいい嫁さん持っておきながら隠し子とは…

 

そんなアドニスは幼くして父親、そして母親もすぐに亡くなって孤独となってしまい、施設を転々とする幼少期を送る。そんな彼の前に現れたのが、アポロの正妻のメアリー・アン。実の血の繋がりのない彼を引き取り、大学まで出して大企業の社員になるまで育て上げる。アポロの嫁さん、人格者すぎるわ。

 

メアリーのもとで立派な青年へと成長したアドニスではあるけれども、彼には密かに抱いていた夢があった。ボクシングである。メキシコで素人相手の試合ではあるけれどもひっそりとやっていたのだ。そしてボクシングを諦められないアドニスは会社を辞めて、プロボクサーへの道を歩むことに。

 

最初は父親のアポロの所属していたジムに、クリードの名前を隠して入門しようとするも、裕福な出であることと、素人相手の試合しか経験がないということで断られてしまう。それでも諦められないアドニスは、父親の宿敵だったロッキー・バルボアの教えを請うためにフィラデルフィアに向かう。

 

前作ロッキーザファイナルから約10年が経ち、ロッキーも老人の域に達していた。義兄のポーリーも亡くなり、亡きエイドリアンの墓の横に埋葬されていた。ポーリーの好きだった酒の瓶を供えて語るロッキーの姿が切なく、時の無情さを感じさせられる。

 

そんな中ひっそりと営業を続けていたイタリアンレストラン、「エイドリアン」にアドニスが師事を請う為に訪ねてくる。しかしロッキーはボクシングから離れていて、それを断る。仕方なくアドニスはかつてロッキーがいたミッキーのジムに入会することにする。ジムで練習を重ねながらもロッキーに熱烈なアプローチを続けて、遂にロッキーから直接指導を受けられるようになる。

 

ロッキーシリーズファンならお馴染みのニワトリを捕まえるトレーニング等をこなしていって、迎えたデビュー戦も2ラウンドKOで勝利を飾るなど、順調なスタートを切るものの、同時に隠していたクリードの名前がばれてしまい、世間にアポロの息子だと知れ渡ってしまう。

 

その頃、世界チャンピオンのリッキー・コンランは銃の不法所持によって収監がきまっており、「最後」の対戦相手を探していた。そこでコンランのマネージャーのトミーは格下のアドニスを指名する。そう、あのアポロの息子であれば注目が高まると踏んだからだ。それを察知したロッキーは対戦を断ろうとするが、クリードの名を背負う覚悟を決めたアドニスは対戦を決め、更に厳しいトレーニングを積むことに。

 

しかしそんな中ロッキーに癌が見つかり、入院することになってしまう。手術を薦めるアドニスに対して、辛い闘病を送るくらいならば、天国にいるエイドリアンやポーリーに早く会いたいと、拒否する。それでアドニスとロッキーは口論になってしまい、自暴自棄になってしまう。そして実の母親を罵ってきた男と喧嘩になって、アドニスは留置場に入れられてしまう。実の母親を侮辱されて怒るのはわからんでもないけど、プロボクサーが一般人を殴っちゃだめだよな。そういう意味ならばロッキー5のトミーなんて論外だけど(ポーリーをKOしてしまった)。

 

そんな傷心のアドニスを迎えに来たのはロッキーだった。アドニスに対して謝罪し、諭した。そして自らも癌との闘病を決意する。アドニスは王者コンランへ、そしてロッキーは難病と同時に闘うことになる。

 

運命の決戦の日、アドニスは完全アウェーの中コンランとの対戦に臨む。当初はコンランに押され気味だったが、アドニスが強烈な一撃を与えると激しい乱戦となる。最終ラウンドでアドニスはダウンを奪うも、コンランが立ち上がって逃げ切り、コンランの判定勝ちとなる。試合前はアドニスを見くびったり挑発したりしていたコンランだったが、「次のチャンピオンはお前だ」と称賛する。そしてアドニスは、セコンドについたロッキーを「家族だ」と呼ぶ。

 

ラストはお馴染みのフィラデルフィア美術館の階段をアドニスとロッキーが歩く。その際のロッキーは「誰かが階段を一段増やしたな」とジョークを飛ばしつつも息を切らしながら登る。そこには前作のようなパワフルなおじさんの姿はない。だけど、新たな「息子」アドニスとの間に確かな絆が生まれているのは明白だった。

 

感想

 

実はクリードを観るのは正直ためらっていた。何故ならば、自分の中でロッキーシリーズはロッキー・ザ・ファイナルで終わっていた(終わらせてほしかった)のと、ポーリーが作中で亡くなっているのを知ってしまったから。今作では遂にあの憎たらしいけどどこか憎めないポーリーすら喪ってしまう。アドニスを自宅に迎え入れるシーンでポーリーの部屋で語る場面で、「ポーリーは偏屈ではあったが親友だ」というセリフを聞くと、今までの思いがこみ上げてしまう。その後でポーリーが所持していたエロ本をアドニスが見つけて、「よろしく、ポーリー」と語りかけるセリフが何故か未来を感じさせられる。あと、前作では和解したかと思われたロッキーJrだが、今作ではカナダに移住してしまっている。個人的には何度和解しては離れるを繰り返すんだ?突っ込みを入れたくもなるけれども、これが現実的なのかもしれない。

 

次に、何といっても年老いたロッキーの存在感が半端ない。前作だったらスピードは衰えていても元気いっぱいの中年だったけれども、今作では完全に老人になってしまっている。足腰は衰え、持病も抱え、更に前述のとおり大切な人を喪ったり、離れてしまったりして孤独になってしまっている。
ロッキーシリーズを通して見てきた自分としてはこんなロッキーは見たくもないという気持ちになってしまう。

 

そんな中現れた「今」のボクサー、アドニス。彼は幼少期はけんかに明け暮れていたけれども、メアリーのおかげで真面目で立派な青年へと成長した。大企業に勤めた経験もあるから頭もよく、彼女やロッキーにも気配りができるハイスペックマンだ。何度も言うけどメアリーの人間性の高さの賜物だ。彼はそんな恵まれた環境もあって、初期のロッキーのようなハングリー精神は持っていないけれども、実の父と母が既に亡くなっていて、しかも隠し子として生まれた複雑な境遇をもつ。
なので最初は実父のアポロを嫌い、クリードの名前を隠していたのだ。

 

最後に、今作を観て思ったのは受け入れることの重要さだろうか。かつては栄光を極め(山あり谷ありが激しかった)たロッキーですらも年老いて孤独になっていくという事実を見せつけられる。あの愛されキャラ(?)のポーリーだって死ぬ。そういったことを踏まえるとロッキー・ザ・ファイナルのようにいいところで終わっておきたいという気持ちにもなりたくもなる。

 

だけど、いつかは受け入れなくてはいけないのだと思う。リーサルウェポン4で、衰えを感じたリッグスに相棒のマータフが俺は歳をとって老いていくのを受け入れたと諭すシーンじゃないけど、そうしないと進めないのだ。

 

この先、ロッキーの更なる老い、そしていつかはその人生のゴールを見せつけられるのだろうけども、目をそらさずに見ていきたいと思う。勿論、アドニスへのバトンの繋ぎも。