ダメ人間にもなれない

PCの画面をクリックするしかできない男の日記

ネタバレ注意 しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦 〜とべとべ手巻き寿司〜を観てきた

久し振りに映画レビューを。昨年末のTHE FIRST SLAM DANK以来の映画館での鑑賞だった。この歳で一人で観るのは正直恥ずかしい気持ちもしたが、どうしてもストーリーが気になっていたので思い切ってチケットを買った。

 

以下ネタバレを含むので、鑑賞していない方はどうかお引き取りを。

 

 

 

 

 

 

 

ストーリー

簡単に説明すると、善の超能力と悪の超能力のエネルギーが地球に現れて、善の超能力が野原しんのすけに、もう一つの悪の超能力が非正規社員の非理谷充に与えられて、悪の超能力を使って暴走する非理谷をしんのすけ達が食い止めるというストーリーだ。

 

非理谷充のジョーカー感

冒頭でティッシュ配りをしている非理谷に対してサラリーマン達が「働け」と突っかかるシーンが現実的で痛々しい。それだけに留まらず、指名手配犯と容姿が似ているというだけで犯人に間違えられてしまうという不条理。この不条理と痛々しさは依然観たジョーカーの冒頭シーンそのものである。

そんな絶望的な状況で超能力が備わって、社会に復讐していく事態に発展していくのだ。

 

野原一家が「勝ち組」に変わった

クレヨンしんちゃんの世界において野原家は一般的なサラリーマン家庭というポジションであったが、現代においては「勝ち組」ポジションに変わってしまった。冒頭での非理谷は朝から何も食べていないほど困窮しているのに対して、野原ひろしはうだつが上がらないながらも家庭、マイホーム、マイカーを持っていて、退勤後に焼き鳥が食べれて、大人のお店にも行けるなどその対比が顕著になっている。

クレヨンしんちゃんを初期から見ていた人達はこんな世界観が現実になることを予測できただろうか?

 

感想

主人公の野原しんのすけを非理谷が圧倒的に上回っていた。むしろ一種の主人公ではないかと錯覚するぐらいに。今作にはヌスットラダマス2世という黒幕的なキャラも登場するけれども、完全にギャグキャラで、扱いもぞんざいなものであった。

非理谷は現実社会での「弱者男性」、「貧困層」の心情を具現化した存在であり、悪の存在でありながらも視聴者の心を鷲掴みにして感情移入させてしまったと思う。

 

しんのすけはそんな非理谷と超能力対決をするのだが、最終的には非理谷の精神世界(過去の記憶)に飲み込まれて、その中で過去の非理谷と寄り添って向き合い、そして非理谷を歪ませた要因の一つであるイジメ相手を倒すという形で非理谷の心を救う。

現実世界ではあのクソいじめっこが評価されて活躍しがちだからスカっとした。

そして、もっと早い段階でしんのすけのような存在と出会えていれば非理谷の人生も変わったのだろう。

 

唯一心残りがあるとすれば、正気に戻った非理谷に対してひろしが「頑張れ」と言って物語が終わったところだろうか。

いくら感情移入できたとはいえ、しんのすけの幼稚園の友人たちやよしなが先生を傷つけたのは許されないし罰せられて然るべきである。

それにあれだけ暴走して街を破壊したのだから損害賠償はどうなるの?とツッコミを入れたくなる。

かなり残酷な意見になるが、非理谷が「ありがとう、しんちゃん」と言って消滅するのが救いのあるエンディングになったのかなと思えてしまうのだ。

 

大人が観ても十分に楽しめて考えさせられた作品だったと思う。